父子合集経講話（六〇）

眼根が虚妄である所以

地水火風が輸送される以前、我々に眼根の存在はあったか。無かった。本来は全く存在せず、如来蔵が地水火風の四大種子を輸送し始めて初めて眼根が形成される。眼窩・眼球硝子体・網膜・視覚伝導神経は、無から次第に物質色法を形成し、最後にはまた散滅する。眼処には微塵ほどの法も得られるものはない。

地水火風の四大種子もまた形相なく無形であり、物質色法ではない。如来蔵は無形無相であり、無形無相の種子を輸送することで有形有相の色法が形成される。無から有形有相の物質が生じる。この中に微塵ほどの法も得られず、何ものも得ることはできない。地性も得られず、水性も得られず、風性も得られず、火性も得られない。されば眼根・眼球・硝子体・網膜などは得るべからざるもの、虚妄なるもの、瞬時に滅するもの、頼むべからず、執着すべからざるものである。

地水火風の四大種子も得られざるものであり、形成された物質世界も得られざるもの。この中に微塵ほどの法も存在せず、何故か。物質色法には自主性なく、主宰性なく、自在性なきが故に、幻化された実体なきものだからである。ここに主宰する者なく、これを造作する者なし。誰が造作するのか。もし我々が造作するというなら、誰が我々を指図するのか。眼根が未だ生起せざる以前には五陰なく、所謂「我々」も存在せず、如来蔵は主宰せず、また造作せず。故に眼根を造作する者も法も存在しない。