末那識の思量性たる離念霊知心とは、意識が無念時に六塵を了別する状態を指すのみならず、更に言語的・表面的な思惟分析作用を持たずして六塵境界及び六塵を超えた法を認知し、より巧妙に、より隠微に、より深く、より思量性に富み、問題解決能力に優れた働きを有する心、それが末那識であります。末那識は意識のように六塵境界を思惟分析することはできませんが、独自の強い思量性を具え、衆生が主に依って決定を下し主宰する所となります。例えば夜間に未解決の問題を抱えたまま眠り、翌朝目覚めた瞬間に意識が「そういうことか」と解決策を知る場合、或いは意識では分析不能な問題を放置中に突然閃きを得る場合、これらは皆末那識の思量作用によるもので、意識に知られず密やかに働いております。
例えば前世の遺骨に関する問題を解決する際、意識は如何なる手段を尽くしても知り得ず、末那識が単独で思量を重ねます。他者の夢中に現れて説法したり、何事かを請願したりする際も、末那識が単独で運営し、その過程には常に末那識の思量性が働いております。意識が思考を放棄した後、突然解決策が明らかになる現象も、実は末那識が絶えず心に留め、思量を続けていた結果であります。末那識の思量対象は極めて広汎であり、意識が認知するのはその一部に過ぎません。意識が智慧を欠く時、末那識の思量性を全く理解できぬが如く、末那識は独自の思量機能と方法を保持しております。
末那識が六塵上で思量する法は、意識の智慧次第で認知される場合とされぬ場合があります。たとえ意識が認知せずとも、末那識は結論を下し「この件は重要なり」と判断すれば、六識に執行させんが為に意識に知らしめ、重要でなければ単独で解決いたします。意識が無知覚或いは鈍覚の状態にあっても、末那識は自らの結論に基づき六識を指揮して実行に移すのであります。
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