生滅と変異の二法は諸行無常を顕わし、生滅変異は即ち苦であり、無常は即ち苦である。諸行無常を観行することは苦諦を観行することであり、苦諦は即ち無我である。瑜伽師地論第三十四巻の原文に基づき、諸行無常の観行を以下のように要約する。
仏が説く諸行無常の「行」には大略二種ある。一つは有情世間、二つは器世間(無情世間)である。仏は言われた「我は人を超えた清浄なる天眼をもって、諸有情の死時生時を観る」と広く説き、さらに身体が壊れた後に善趣の天世界に生ずることを示された。世尊は清浄なる天眼によって一切有情世間が無常性であることを現見された。仏が観る一切の法は、世間・出世間を問わず全て現見であり、比量思量や非量の臆測は存在しない。智慧が究竟円満であるが故である。衆生の見る法は現量・比量・非量の三種に分かれるが、仏は完全に現量である。器世間の無常については、長阿含経中の起世因縁経に説かれる器世間の生住異滅を参照せよ。
如何にして諸行の無常性を確認すべきか。観行者は清浄なる信解の増上作意力によって、一切行の無常性を決定する。更にこの清浄信解の増上作意力を以て、反復して無常性を尋思観察する。観察対象は第一に内事(眼耳鼻舌身意の六処)、第二に衣食住など十六種の外事(地事・園事・山事・水事・作業事・庫蔵事・食事・飲事・乗事・衣事・荘厳具事・舞歌楽事・香鬘塗飾事・資生具事・諸光明事・男女承奉事)である。詳細な観行方法は論中に述べられる。
内外事の変異過程を観察して無常性を観る。内事六処には十五種の変異がある:一に分位による変異、二に顕色による変異、三に形色による変異、四に興衰による変異、五に支節具不具による変異、六に労苦による変異、七に他害による変異、八に寒熱による変異、九に威儀による変異、十に触対による変異、十一に雑染による変異、十二に疾病による変異、十三に終没による変異、十四に青瘀等による変異、十五に一切不現尽滅による変異。
一に如何にして分位による変壊無常の性質を尋思すべきか。自他が少年期から老年期へと諸行が相続し、前後の差違が互いに相似せぬことを観見し、この事実を見て「かくの如き諸行は其の性無常なり」と作意する。何故ならば、この内分位の前後変異が現に得られるからである。二に如何にして顕色による変異の無常性を尋思すべきか。自他がかつて肌色鮮やかなりし時と、後に肌枯れし、再び鮮やかになる過程を観見し、この事実を見て無常を悟る。三に如何にして形色による変異の無常性を尋思すべきか。顕色と同様、肥満と痩身による形色変化を観察する。
四に如何にして興衰による変異の無常性を尋思すべきか。自他が眷属・財産・戒律・見解の盛衰を観見し、この変遷を見て無常を悟る。五に如何にして支節による変異の無常性を尋思すべきか。自他が四肢健全なる時と、王・賊・人・非人による損傷を受けた時を観見し無常を悟る。六に如何にして労苦による変異の無常性を尋思すべきか。走行・跳躍・騎乗等の激務による身体の疲労と、休息後の回復を観察し無常を悟る。
七に如何にして他害による変異の無常性を尋思すべきか。自他が刀杖・蚊虻等の外傷を受け、後に治癒する過程を観見し無常を悟る。八に如何にして寒熱による変異の無常性を尋思すべきか。寒時に凍え、熱時に渇き、季節巡り再び寒さに戻る様を観察し無常を悟る。
九に如何にして威儀による変異の無常性を尋思すべきか。行住坐臥の姿勢変化が身体に与える損益を観見し無常を悟る。十に如何にして触対による変異の無常性を尋思すべきか。楽受・苦受・不苦不楽受の各分位を了知し、諸受が新新たに変化し暫くして壊れることを観て無常を悟る。
十一に如何にして雑染による変異の無常性を観察すべきか。貪瞋痴の煩悩と離脱の心を了知し、煩悩染汚心と清浄心の相続変遷を観て無常を悟る。十二に如何にして疾病による変異の無常性を観察すべきか。健康時の安楽と病苦時の苦悩、回復後の状態を観見し無常を悟る。
十三に如何にして終没による変異の無常性を観察すべきか。生存時の姿と死後の無心識なる屍骸を対比し無常を悟る。十四に如何にして青瘀等による変異の無常性を観察すべきか。死体が青瘀・膿爛・骨鎖と変遷する過程を観て無常を悟る。
十五に如何にして一切不現尽滅による変壊無常の性質を観察すべきか。骨鎖さえも遂には消滅し眼に見えなくなることを観見し「かくの如き諸行は其の性無常なり」と悟る。何故ならば、この色相が数数改転し前後変異が現に得られるからである。
回向文:当ネットワークプラットフォームにおける一切の弘法と共修の功徳を、法界の衆生に回向し、世界の民衆に回向す。世界平和を祈願し、戦争起こらず、烽火燃えず、干戈永遠に止むことを。一切の災難尽く消退せんことを。各国人民が団結相助け、慈心を以て相対し、風雨順い国泰民安なることを。一切衆生が因果を深く信じ、慈心をもって殺生せず、善縁を広く結び、善業を修め、仏法を信学し善根を増長し、苦を知り集を断ち、滅を慕い道を修め、悪趣の門を閉じ涅槃の路を開かんことを。仏教の永興と正法の永住を祈り、三界の火宅を極楽の蓮邦となさんことを。
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