ウイルスとは人類に無益で有害な細菌類の有情です。有情と呼ばれる以上、これを殺すことは殺生にあたります。しかし仏陀が制定した不殺生戒の中に、細菌類の有情は含まれません。娑婆世界の人間界においては、神通力を得た者を除き、いかなる者も細菌を避けて生存することは不可能だからです。
菌類の有情は天地に満ち、数え切れません。体内や体表、空気中に遍在し、食品中にも存在します。発酵パンは菌類の働きによって膨らみ、各種酵素や漬物類も菌類に依存しています。菌類がなければ、多くの飲食を人類は享受できません。人類の生存は菌類の有情に依らざるを得ず、そうでなければ生存不可能です。例えば飲食の消化吸収や排泄、胃腸の蠕動運動も、細菌の助けに依拠しています。体内には有益菌と有害菌が混在します。有害菌とは人体を損ない病気や死を招く細菌であり、薬物消毒はこれらに対処するものです。これらの細菌が滅びてこそ、人類の健康と生命の安全が保たれます。
厳密に言えば、全ての人は能動的・受動的に細菌を殺した経験があります。免疫力の強い人体細胞は侵入ウイルスを貪食しますが、人類はこれを認識しません。もしウイルスを滅ぼすことが殺生に該当するなら、仏陀の戒律を守り得る者はいなくなり、悟りを得る者もいなくなります。これにより、ウイルスの駆除は殺生に該当せず、高次生命である人類を守るため、有害な最下級生命を滅ぼすのは止むを得ぬことです。生命の進化とはかくあるべきだからです。
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