(三)原文:結び所系の法において、無常観に随順し、生滅観に住し、無欲観、滅観、捨観を修め、顧念を生ぜず、心縛着せざれば、すなわち愛滅す。愛滅すれば取滅し、取滅すれば有滅し、有滅すれば生滅し、生滅すれば老病死憂悲悩苦滅す。かくの如く純大苦聚滅す。
釈:仏は説きたまう、もし煩悩の結縛に系がれたる法(六塵の境界)に対し、これらの法の生滅無常性を観察し、心を法の無常性と生滅性に随順せしむれば、法に対し欲求なく、法は滅し捨てるべきものと知り、法に再び顧念する心なく、法を滅し捨てんと欲す。かくして心は法に縛られず、愛貪滅す。愛滅すれば執取の心滅し、執取滅すれば三界の有滅し、有滅すれば生滅し、生滅すれば老病死憂悲悩苦滅す。かくして六道の生死における純大苦の集まり滅す。
原文:樹を植うるが如し。初め小さく軟弱なる時、愛護せず、安穏ならしめず、糞土を培わず、時に随って灌漑せず、冷暖適わざれば、増長を得ず。もしまた根を断ち枝を截り、段段に斬截し、分分に解析し、風に飄わされ日に炙らせ、火を以て焚焼し、焼けて糞と成し、或いは疾風に揚げ、或いは流水に投ず。比丘よ、意いかん。彼の樹を根より断截し、焚焼して磨滅せしめ、未来世に生ぜざる法たらしむるに非ずや。答えて言う、然り世尊。
釈:仏は説きたまう(煩悩の結縛を断つこと)、樹を植える如し。初め小樹の柔弱なる時、これを愛護せず、養わず、安穏なる環境を与えず、糞土を培わず、時に随い灌漑せず、寒暖適わざれば、小樹は生長せず枯死す。もしさらにこの小樹の根を断ち枝を截り、細かに分解し、風に晒し日に炙り、火に焚き、灰燼と成して疾風に散じ、或いは流水に流せば。比丘らよ、如何に思うか。この樹を根元より断ち焚き払い、未来永劫生ぜしめざるようにするではないか。比丘ら答えき、然り世尊。
煩悩の結縛もまたかくの如し。煩悩現前する時、決して随順せず養わざれば、次第に萎滅す。愛貪滅すれば煩悩なく、未来の生老病死の苦悩現れず。
原文:かくの如し比丘よ。結び所系の法に無常観を随順し、生滅観に住し、無欲観、滅観、捨観を修め、顧念を生ぜず、心縛着せざれば、すなわち愛滅す。愛滅すれば取滅し、取滅すれば有滅し、有滅すれば生滅し、生滅すれば老病死憂悲悩苦滅す。かくの如く純大苦聚滅す。仏この経を説き終わりたまう。諸比丘仏の説きたまう所を聞き、歓喜し奉行せり。
釈:仏は説きたまう、比丘らよ、煩悩の結縛に系がれたる法に対し、その無常生滅性を観じ、その無常生滅性に随順認めれば、心に欲求なく、これらの無常法を滅し捨てんと欲し、再び顧みず、執取せず。かくして心縛られず、愛貪断ず。愛滅すれば執取の心滅し、執取滅すれば三界の有滅し、有滅すれば生滅し、生滅すれば老病死憂悲悩苦滅す。かくして六道の生死における純大苦の集まり滅す。
一切の法は常に生住異滅し、皆無常なり。されば一切の法に対し随縁に捨て、捨てて苦悩なく、執れば執るほど苦しむ。三界の有為法を捨て、縁に随って過ごせば、心縛られず自在解脱す。一法を愛すればその法に縛られる。愛貪滅し執取せず、一切の法に執着なき時、未来の三界の有と生現れず、生老病死の苦も皆消滅す。
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