父子合集経講話（一七六）

色は人を迷わすにあらず、人が自ら迷う。無明を除けば万法通ず

我々の心識の虚妄性を仔細に思惟し、世間の一切の法が生滅する幻影であることを観察すれば、内心の執着は減じ、妄想や雑念も少なくなり、世人の精神的な病も減じ、神経衰弱や不眠も軽減され、様々な病症が消え去ります。病の根源はどこにあるか。一つは過去世の業の果報、もう一つは現世の煩悩から生じる妄想にあります。衆生は皆自ら苦を受ける道を選ぶのです。真理を悟れば心に煩悩なく、理を通さねば煩悩重なり、苦悩無量。これ皆自ら招くもので、他者から与えられるものではありません。全ての病は虚妄にして幻化、来る所なく、去る所もなし。これら理を悟れば百病を治し、生理医も心理医も要らず、一切の病障は幻の如く生滅します。仏法を悟れば万法皆通じ、仏法を学べば一切の世間法も明らかとなるのです。

世間の人々の身体の病、心の病、家庭の煩悩、仕事の悩み、これら全ては己の無明の業障に縛られた結果です。仏法を学ばぬ者はこの理を通ぜず、学びてなお悟らぬ者は深甚なる思惟観行を修さず、自らの無明に覆われています。真に世間の真理を悟るには、まず己を明らかにせねばなりません。さすれば万法皆通ず。故に世間法が通ぜぬは心に結縛あるが故、解くべきは外境ではなく己が心の結び目なのです。

外界の色塵が煩悩を生むと嘆くべからず。己が心が何故外色に引きつけられ、外境に執着するかを省みるべきです。外境が我々を縛り付けるのではなく、己が心がこれを執取し排斥しようとする故、境界に縛られるのです。元来境界を掴まんとしたが、逆に境界に掴まれてしまう。五欲六塵が我々を縛り、生死流転の苦しみを永劫にもたらします。かくして我々は万法に縛られて六道輪廻に繋がれ、煩悩の生死大海に沈むのです。