なぜ権勢を有する富者は救い難いのか
仏は父親に対して懇切に諭されました。現在の世間における富楽や五欲の自在に執着すべきではなく、色境・声・香・味・触に心の貪着を生じ満足を知らぬ時節において、色声香味触法の諸境界に再び貪着してはならないと。心が五欲六塵に貪着する時、容易に満足を得ることは叶わぬ道理です。世尊の父王は数十年にわたり王位にあって世俗の五欲楽を享受しながら、なおその苦しみを知らず、出離の心を起こさずにおられました。仏はこう諭されたのです。汝は再びこの世の富貴と快楽に執着すべきではない。諸根は幻の如く、境界は夢の如しと。六根はすべて幻化したものであり、眼根は色に執着せず、耳根は声に執着せず、五欲楽に迷い込んで紙酔金迷の生活を送ってはならない。これらはすべて幻化したものであり、六塵の境界は夢の如く真実ならず、瞬時にして幻滅するものであると。
なぜ仏は繰り返し父王を諭されたのか。権勢ある富者は救い難く、長きにわたり五欲楽に沈酔し、自らを解脱させることが容易でないからです。一方、貧しい者は苦しい生活の中で世の苦しみを深く覚り、仏法に遇えば自ずから勇猛精進して学仏修行に励みます。ただし福徳の極めて薄き者は、生活の計らいに追われ世俗の生活に奔走するため、仏法を学ぶ余裕を持てない場合もあるのです。
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