あらゆる悪業を作るのは、悪心や煩悩心によるものであり、すべて心性が良くないことに帰する。したがって性罪を有し、その果報は戒律を受けたか否かに拘わらず同様である。衆生は貪瞋痴の性障煩悩を有するが故に、六道輪廻において報いを受け、特に三悪道に堕ちる者が極めて多数を占める。戒律を受けていない者は、心性が戒律に相応せず、法に違反する行為があれば、心性における果報は戒を犯した者と同等となる。
例えば、五戒を受けていない者が人を殺害した場合、依然として地獄に堕ちて悪報を受けねばならず、地獄を出た後もその相手と再会すれば命を償わねばならない。畜生を殺す場合も同様に罪を有し、報いを受け命を償う必要がある。その他の戒律を犯す場合も同様で、該当する悪報は必ず受けることとなる。五戒を受けていなくとも、身口意の行いが五戒に順じ、心性が善であれば善報を受け福楽を得る。また利益を与えた衆生も、相応の利益をもって報いる。
ただし戒律を受けたか否かには一点の差異がある。戒を受けた者が故意に戒を破れば、戒罪という追加の罪を負う。戒律を承知の上で犯す行為自体が戒律を軽んじる所行であり、故に罪を生ず。故意の犯行と無知による犯行では、煩悩がより重く、従って果報もより重きを受ける。
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