五取蕴の「取」は誰が取るのか

五取蘊は必ず意根によって執取されます。なぜなら意根は生生世世存在して滅びず、また主導する識であるため、無始劫以来ずっと自らを万法の主人と見做してきたからです。それ故に意根は必ず万法に執着し、一切の法を執取し続けるのです。意根が執取しなくなれば、万法は現前せず、自我は必ず消滅します。意根が色蘊・受蘊・想蘊・行蘊・識蘊を執取するからこそ、五蘊は生滅を繰り返し、永遠に断絶せず消滅しないのです。なぜそうなるのでしょうか。如来蔵が常に意根に随順し、意根の心行と願いを了知しているためです。意根が執取すれば如来蔵は顕現し、五蘊は消滅しません。ただし業種と業縁も必要です。意根が執取しなくなれば業種は消滅し、業縁は現起せず、万法は現れず五蘊は消滅します。

意根は色蘊を執取し、相に執着し色身に貪着するため、錦衣玉食の生活を好み、衣食住に享楽を貪り、色身をあらゆる手入れで保養します。

意根は受蘊に執着し、感覚に貪着します。例えばお茶を飲む時、お茶が美味しいと感じれば杯を取り茶を注ぎ、一杯また一杯と味わい続けます。これを主導するのは意根です。意根が茶の風味や感覚に執着するからこそ、貴重な時間を費やしてまで茶を味わい、中には身体を損なうことを厭わず酒に耽る者もいます。座禅で快適さを感じれば身体を動かさず、心も怠けて問題を考えなくなります。これは意根が動くことを好まず、快適な感覚に執着するためです。入定の快適さに執取すれば動くことを欲せず、定から出ようとしません。意根は無自覚に多くの感覚に執着していますが、自らこれを観ることは困難です。意識が仏法を学んで悟り、不断に意根を牽制することで初めて意根を降伏させ、感覚への執着を断ち解脱を得るのです。

意根は想蘊を執取し、天下の大小事を知りたがります。国内外のニュースに注目し、他人の事柄に関係なく興味を持ち、過去現在未来の人事を心に満たします。テレビや新聞で情報を収集するのも、意根が想蘊を執取し六識に作らせるためです。

意根は行蘊に執着し、一日中休むことなく造作します。東で事あれば東へ、西で事あれば西へと身口意の行いを止めません。これでは如何にして禅定を得られましょうか。

意根は識蘊を執取し、六識の識性を止めようとしません。眼は六方を観、耳は八方を聞き、心は過去未来を思い巡らします。意根が清浄になり無益な造作を止めれば、六識は寂静となるのです。