十二因縁における意根の決定的役割

衆生に生老病死の純大苦聚有るは、全て無明有るが為なり。この無明は即ち意根の無明にて、意根に無明有るが故に心行思心所が生じ、思心所有るが故に業を造る決択有り、その後六識が現れたり。十二因縁の前二支分は皆意根に属し、第三支分の六識も意根有るが故に現る。故に意根は生死に対し絶対的な主導作用を有し、他の法に対しても推進作用を有す。第三支の六識の業行すら、意根に随順して有り、落謝する種子も意根有るが故なり。故に後世の名色は意根有るが故に生ず。意根が染汚なれば六識も染汚し、種子も染汚し、名色の苦受は多くなり、特に三悪道の苦は甚だし。

名色が増長した後、六入を出生し、六入と六塵の触は意根を主とす。意根の攀縁多ければ触多く、生死の業も多し。攀縁少なければ触少なく、生死の業も少なし。触後の受・愛・取には、六識の受愛取有るも、実際に決定作用を起し、次の支分を引出すは意根の受愛取なり。意根に受愛取無ければ、次の支分は現れず。最後の三支の有・生・老死は、全く意根の取有るが故に現る。故に生死輪廻の出現は、意根が決定的作用を為す。

十二因縁は意根が生死の根元たるを闡明し、解脱と沈淪は皆意根に在り。生死を了脱せんと欲すれば、意根の問題を解決し、意根の無明を破らざるべからず。意根はまた四聖諦の苦集滅道の根元なり。苦は意根の無明心行が六識に業を造らしむるに由り、集は意根が六識に業を造らしめ落とす種子に由り、滅は意根の無明心行を滅除するに由り、道は意根が法を証得するに由り来る。

既に意根が生死輪廻の中に在りてかくも巨大なる決定的作用を有すとすれば、意根は一切の心所法を具足し、全ての善心所法と煩悩心所法、及び不善不悪心所法を具足す。意根の心所法は五識の心所法を決定し、意識の心所法を決定す。意根の心所法が改まれば、六識の心所法も改まり、一切の法皆これに随って改まる。意根の心所法を改めざれば、六識の心所法仮令改まるも再び元に戻らん。意根の煩悩断ぜざれば、意識仮令煩悩を断つも再び煩悩を生ぜん。意根に禅定無ければ、六識仮令禅定有るも永く続かず、必ず再び散乱せん。