ブラックボックス世界（四十九）

仏には五眼六通があり、仏は六塵を了別するが、六識を用いずとも内相分を了別することができ、勝義根をも用いる必要がない。仏の単独の無垢識のみで、前七識に代わって一切の法を了別することができる。たとえ仏の前五識であっても、単独で一切の法を了別しうる。仏の八識はすべて二十一の心所法を具えており、五遍行（作意・触・受・想・思）、五別境（欲・勝解・念・定・慧）、善十一（信・慚・愧・無貪・無瞋・無痴・精進・軽安・不放逸・行捨・不害）を備えている。仏の無垢識は妙観察智と同様に欲・勝解・念・定・慧を有し、六塵の境界を了別観察することができる。前五識と第七識も同様であるため、仏の八識はすべて円満なる智慧徳能を具えている。

目で人を睨む、悪眼で見る、細目で見下す、軽蔑の眼差しを向ける――これらは眼識の不善なる心所である。しかし仏地に至れば、仏の前五識もすべて善となり、さらに前五識にも慧が具わり、一切の法を了別しうる。これらの境界は、我々には想像すら及ばない。仏が直接に外相分を了別しうる以上、仏の外相分は必ず殊勝で完全なものである。しかしまた衆生の心に応じて、衆生の不殊勝・不完全な境界をも了別しうる。仏にとって不完全なものは存在しない。したがって娑婆世界は釈迦仏にとって極めて殊勝な仏国土であり、心に染汚ある衆生が見る世界とは全く異なる。これが維摩経の一節に説かれる所以である。