原文:何が故にか。これら衆生には、もはや我相・人相・衆生相・寿者相なく、法相もなく、また非法相もない。
釈:世尊は説かれた。何故か。如来の身相に執着せず、全ての相が虚妄であることを知るこれらの衆生は、既に我相・人相・衆生相・寿者相を離れているからである。彼らは先ず四相を破り、更に一切の法相を破って無相の境地に至った。自性清浄心は本来一つの法相もなく、現れる一切の相は即ち空と仮である。
法は有為法と無為法、縁生法と非縁生法に分かれる。五蘊は法であり、十八界は法であり、三界も全て法である。真如もまた法であり、無為法である。凡そ認識され得るものは全て法であり、見える見えないを問わず、存在するものは即ち法である。真法と妄法、生滅法と不生滅法、因縁によって成る法と先天から存在する非因縁の法、あらゆる角度と側面において区別がある。
法には因縁法と非因縁法がある。因縁法は即ち空であり妄である。非因縁法は本来から存在する法であり、即ち真実の法、不壊滅の法である。直接成仏を指し示す法は究竟法であり、明心見性の法・真如の法が即ち究竟の法である。究竟法に至る方法は方便法である。法相は有を表し、非法相は空を表す。真心の存在を知らず、真空が妙有を生じることを知らぬこのような無見・空見は断滅の空見である。実相心たる第八識が存在しなければ、一切の法相・空相・仮相は何処から来るのか。虚空から来ると言えば、それは虚空外道である。虚空は何も生じさせ得ない。大梵天・老母神・上帝・イエスから来ると言うなら、彼らはまた何処から来たのか。断滅空論者は一切を否定し、因果をも否定する。因果律は第八識によって実現され、業種を収蔵し業種を出力し、平等に衆生の因縁果報を実現する。一つの法も漏れ乱れることなく存在する。
故に衆生の生まれ持つ性別・相貌・父母・貧富・寿命・環境などの差異は、第八識が含む業種の違いによる。これらの業種は前世の所業による。金剛経の章句に対し一瞬の清浄信を生じる者は、四相を破っただけでなく一切の法相を離れ、更に何も無い断滅空の法相も無い。四相を破って大乗・小乗の果位を証した者は、生死の依り所となる第八識・阿頼耶識を信受しない者はいない。そうでなければ証道の者とは言えない。
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