第八識は我なりと雖も我性無く、第六七識は我に非ずと雖も我性有り

涅槃経原文：また解脱とは、一切の有為の法を断じ、一切の無漏の善法を生じ、諸道を断塞することを名づく。いわゆる若し我あり無我あり、我に非ず無我に非ずと。ただ取著を断つも、我見を断たず。我見とは仏性を名づく。仏性とは即ち真の解脱なり。真の解脱とは即ち如来なり。

釈：解脱とは、世間の一切の有為の法を断除し、貪瞋痴の煩悩なき善法を生じ、三界世間の一切の有為の法の通路を断塞することを指す。これらの無漏の善法はあるいは我（第八識）、あるいは無我（六七識の証する所）であり、我あるに非ず（六七識）と無我に非ず（第八識）である。我とは、一に第八識を指し、二に六七識を指す。無我とは、一に第八識を指し、二に六七識を指す。

悟りの前には、六七識は我あり我ありとし、悟りの後には、六七識は我に非ず無我とし、第八識を我と認む。第八識を我と認むといえども、第八識もまた無我にして、六七識の如き我性・作主性・執取性・無明性を有せず。

総じて言えば、第八識は我無我の性を有し、六七識は我に非ずして我性を有す。六七識が我見を断じた後は無我となり、我の我に非ざるを知り、明心以後次第に第八識を我とし、次第に我性を無くす。

かくの如くただ五蘊世間法への取著を断ずるのみにて、我見を断ぜざるなり。この我見とは即ち自らの真如の仏性を指す。第八識の成仏の性なる者は即ち真の解脱なり。真の解脱なる者は即ち如来なり。