考えた後、現量観察が必要であり、初めて役に立ちます

意識の自我、意根の自我を思惟してみると、これらはまことに虚妄なる存在に過ぎないのではないでしょうか。強力で真実なる存在はただ真如の心のみであり、真如の心こそが不可思議なる真常の体、智慧の体であります。これを知ったならば、あなたはなおもこの微塵の如く小さく虚妄不実なる人世間の愛憎喜怒、得失成敗に執着し続けるでしょうか。以上は修行者の感慨、すなわち悟りと言われるものであります。しかしながらこのような悟りを得たとしても、身心世界を根本から転換し変化させるためには、この基礎の上に立って、ありのままに禅定において観行を修め、実証を得た後に初めて身心世界を改め、真に一定程度の解脱を得ることができるのです。思惟することは意識の能力範囲に属しますが、実証は意根に依らねばならず、意根は現量を要します。故にただ思惟するだけでは役に立たず、現量による観察、現量による認知が必要であります。世間の一切が空であること、すべて如来蔵の幻化であることを知るだけでは大した役に立ちません。次の段階の実際の修証が必要であり、ただ証得して初めて心は空となり、解脱の力を得るのです。世間を終日夢幻泡影の如しと心中で思う人々がいますが、それだけでは実際に夢幻泡影であるかの如く感じるだけです。しかし事が身に迫れば、依然として元のままであり、少しも夢幻泡影ではありません。真に夢幻泡影を証得するのは十回向の位においてであり、初地の菩薩に近づいた時、その時に初めて心行が変化します。しかし実際の観行に先立つ理論的知見は充分に具える必要があり、心に相似の空を有し、理論にある程度の理解を得て、この基礎があって初めて禅定において実際に参究観行し、実証の望みが持てるのです。