原文:香厳童子は、即座より立ち上がり、仏足を頂礼して仏に申し上げた。「私は如来が諸有為の相を諦観せよと教えられたのを聞きました。その時私は仏のもとを辞し、静寂な斎室にて瞑想に耽りました。ある時、比丘たちが沈水香を焚くのを見ました。香気は静かに鼻に入って参りました。私はこの香気を観察し、木からでもなく、虚空からでもなく、煙からでもなく、火からでもないことを知りました。去るにも所著なく、来るにも所従なし。これによって意識は消滅し、無漏の悟りを開きました。如来は私を印可され、香厳の称号を賜わりました。塵気は瞬時に滅し、妙香は密かに円満しました。私は香厳より阿羅漢果を得ました。仏が円通を問われたので、私が証したところでは、香厳を最上とします」
釈:香厳童子はこの時座より起立し、仏足を頂礼した後、仏に申し上げた。「如来が一切の有為相を仔細に観察せよと教えられたのを聞き、仏のもとを離れて静寂な処で観行思索を始めました。ある日、数人の比丘が沈水香を焚くのを見ました。香気は知らぬ間に漂ってきて鼻に入りました。私はこの香気を観察し、香木から来るのでもなく、虚空から来るのでもなく、煙から来るのでもなく、火から来るのでもないと考えました。香気が消えた後もどこにも附着せず、来るときも来処がありません。考え続けるうちに、私の心念は全て消え去り、四果無学を証得し、漏尽して阿羅漢となりました。如来は私が香厳の称号を得たことを印可されました。以来、世間の塵気は私の境界に存在せず、微妙な香気は密かに円妙となり、香厳によって阿羅漢を証得しました。仏が円通法門を問われたので、私が証得したところでは、香厳を最上とします」
香厳童子が香気を観察した際、定力は極めて深微で、思惟は鋭敏細やかであり、観察は微に入り、ついに三昧を発起しました。香厳童子は考えました。沈水の香気はどこから来るのか?もし香木から来るなら、香木のある所には常にこの香気があるべきだが、焚かれていない時は香気がない。虚空から来るなら、虚空は常住だから香気も永続すべきだが、そうではない。煙から来るなら、普通の木材の煙にはこのような習気がない。火から来るなら、他の火にはこの香気がない。ついに香気は来るところなく去る所もなく、空であることを悟り、心も空となり、一切の煩悩が脱落し尽くして阿羅漢果を証得しました。
阿羅漢果を証得するには最低初禅定を具足し、最高四禅八定を要します。このような深い禅定においては、心の働きは極めて微細で、観行は現量観行であり、情思意解や推測を伴いません。意識の思惟作用は極めて少なく、意根の思量が主となります。理解は意識に依り、証得は必ず意根に依ります。意識は「然り」を知るが「所以然」を知らず、これが理解です。意根は「然り」を知るのみならず「所以然」をも知り、これが証得です。意識の理解は粗く大略的で微細に入れず、意根の証得は微に入り表裏を通じ、その経緯を知ります。全ての三昧智慧境界は意根と意識が共に証し、定慧を具足するものです。
1
+1