《大乗顕識経》講義

賢護が仏に申し上げました。「世尊よ、衆生は識の存在を知ってはおりますが、宝が箱に閉じ込められた如く、顕現せず理解できません。世尊よ、この識がどのような形状をなし、何故に識と名付けられるのか存じません。衆生が死に臨む時、手足は乱れ動き、目の色は変化し、制御できず自由を失います。諸根は滅び、諸大は分離し、識は身を遷して何処へ去るのでしょうか。その自性は如何なるものか、如何なる色相をなし、如何にしてこの身を捨てて更に他の身を受けるのでしょうか」

それでは阿頼耶識が最初に色身の中に来るのでしょうか。そうではありません。阿頼耶識は単独で色身を保持できず、また色身を保持しようとする心もありません。意根の思心所の影響を受け、意根に随順して刹那に受精卵に入り、受精卵を保持すると共に、意根と同時に母胎に入ります。阿頼耶識と意根は影の形に離れず、刹那も分離できないため、両者が母胎に入る時も色身を離れる時も前後はありません。もし前後があれば、両者が互いに分離可能であることを示し、意根が単独で存在し、阿頼耶識も単独で運行できることになり、これは阿頼耶識と意根の体性に反するからです。

四大の種子は阿頼耶識から出てきます。阿頼耶識が色身を離れる際、必ず全ての四大種子を回収します。これにより阿頼耶識中の種子は増減なく、縁に遇って再び送り出され、万法を生じさせるのです。衆生が死に臨む前、甚だ長い時を経る前から、阿頼耶識は業種を了別し得るが故に、死の時を知っています。具体的な時も知り、徐々に四大種子を変化させ、身体を腐臭させ、身体機能を衰弱させます。息が絶えんとする時、真の四大分解が始まり、四大種子を全て回収します。完全に回収された時、色身は屍となります。

前五識は現起せず、五倶意識も続いて消滅します。勝義根の四大が分解するに従い、独頭意識も次第に消え、正死位に入ります。死の過程において、善業を為した者は比較的短く苦痛もありません。悪業を造った者は死に至る時間が長く、多くの死苦を承受します。この過程は数時間、あるいは十数時間に及ぶこともあります。

六識が次々に消滅する過程は、四大が徐々に分離する過程でもあります。この時、特に強い苦痛を感じます。四大種子が一つずつ分離し、分離した四大種子は再び阿頼耶識に帰ります。阿頼耶識が四大種子を出力しなくなると、身体は次第に温もりを失います。火大が分離し、身体は徐々に冷たくなり、地大・水大・風大も順次分離し、阿頼耶識に回帰します。

しかし善業を為した者はこの時苦痛を感じません。これは善業の果報によるもので、瞬く間に天界に生じます。我見を断じていない者でも、善業の果報により天界で福を享けるため、三界に未練があっても天楽が響き、天界の父母が待ち望んでいます。善果報を得た者の八識が色身を離れる時間は長くなく、瞬時に昇天するため苦痛を経験しません。人間道に生じる者は息が絶える時間が比較的長く、死亡過程も短くはありませんが、苦痛は多くありません。

原文：賢護が仏に申し上げました。「世尊よ、衆生は識の存在を知ってはおりますが、宝が箱に閉じ込められた如く、顕現せず理解できません。世尊よ、この識がどのような形状をなし、何故に識と名付けられるのか存じません。衆生が死に臨む時、手足は乱れ動き、目の色は変化し、制御できず自由を失います。諸根は滅び、諸大は分離し、識は身を遷して何処へ去るのでしょうか。その自性は如何なるものか、如何なる色相をなし、如何にしてこの身を捨てて更に他の身を受けるのでしょうか」

悪業を重ねた者ほど臨終の四大分解時に苦痛を感じ、命終の際に手足を乱れ動かし、苦悶の様子を示します。しかしこの苦痛を表現する手段は既に失われています。舌・口・歯は身根に属し、身根が機能しないため話すことができません。この時誰かが触れれば、非常に苦痛を感じ、瞋恚心を起こす可能性があります。瞋心が起これば、そのまま地獄に堕ちることもあります。故に人が死んで間もない時は触れてはならず、遺体が完全に冷えるまで洗身や着替えを待つべきです。完全に冷える時間は八時間から十数時間と様々です。三悪道に赴く者の身体は冷たく硬直し、顔色も良くありません。地獄衆生の顔色は黒ずみ、餓鬼道は青ざめています。

最後に六識が全て滅尽すると、五蘊が消失し、意根は五蘊身を利用できなくなります。色身を制御する手段を失い、色身への執着を断念すると、色身を離れ新たに胎を求め、中有身が生じます。これが諸根喪滅の過程です。

「諸大乖離」とは地水火風の四大分解（実際には空大も含む）を指します。本来和合していた四大が分離し、色身の生命機能が消失します。肉身は存在しても活動不能となり、木の如き状態となります。

阿頼耶識は衆生の色身が四大分解した後、意根と共に色身を離れ、次の色身に転生します。業種によって定まる新たな色身を顕現させます。多くの場合中有身を経て各道に赴きますが、天界に生じる時や地獄に堕ちる時には中有身はありません。阿頼耶識の赴く先は臨終時の業縁によって決まります。前世の悪業が今世で仏法を学ばず善法を修めなければ、三悪道に堕ちる可能性があります。しかし今世で善業を積み、その縁が熟し善業が悪業を上回れば善道に生じます。阿頼耶識は衆生の業縁に随って遷移するのです。臨終時にはどの業縁が先に熟するかが重要です。今世の善業が小さく悪業の縁に抗えない場合、仏法を学んでいても悪業の報いを受けます。