只今、感染症流行の最中にあり、団地の入り口で警備員が問いかけるのは、魂の奥底を揺さぶる生死の大問題であります。第一に「あなたは誰か」、第二に「どこから来たのか」、第三に「どこへ行くのか」という問いでございます。
そして額に体温計を向けられるのであります。この行為はまさに禅宗の機鋒そのもの、悟るなら即座に悟り、悟らねば先の三つの問いを参究せねばなりません。人々は無量劫を生きながら、己が誰かを知らず、来し方行く末も知らぬまま、生ける屍の如く暮らしております。これは動物と大差なく、ただ生きているに過ぎません。そろそろ目を覚ます時ではございませんか。
生死の大事に直面する時、警備員たちは禅宗の祖師に代わり、その体温測定は祖師の棒喝に等しく、三つの問いは禅宗の話頭そのものであります。それは思考の扉を開く梃子の如く、聡明な者こそ早く悟りを得るのでございます。
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