もしある者が亡くなった後も輪廻転生を繰り返し人間に生まれ変わり、因縁によって前世の墓穴を掘り当てた場合、隔陰の謎によって自らがその前世であることを知らないまま、副葬品を持ち去ったならば、これは所有者の許可を得た行為と見做せるでしょうか。もしそうでないならば、これは盗みにあたるのでしょうか。
この者が盗んだものは前世の所有物ではありますが、この行為は依然として盗罪に該当します。なぜなら盗心が存在するからです。一切の罪福の業は心を主とし、心がなければ罪福も生じません。ただしこの者が盗んだのは自己の物であるため、他人を侵害しておらず、物品が他人から自己へ移転しておらず、所有者の交替が発生していない点で、盗業は完全に充足されず、その罪は軽微です。
他者の家で特定の物を盗もうとして探し回ったが見つからなかった場合、あるいは物を持ち去ろうとした際に主人が帰宅し、やむなく物を放棄して逃げた場合と同様です。これらは盗心が存在しても物品の移転がなく盗業が成立せず、定罪に至らないため処罰が軽減され、果報も軽微となることを示しています。
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