『楞厳経』第三巻 眼根と色塵における虚妄

原文：また阿難よ。いかにして十二処が本来如来蔵の妙真如性であると言えるのか。阿難よ、汝しばらくこの祇陀林および諸々の泉池を観よ。汝の意いかん。これらは色より眼識の見が生じるのか、眼根より色相が生ずるのか。阿難よ、もし眼根より色相が生ずるならば、虚空を見る時は色相無く、色性は消滅すべきなり。消滅すれば一切皆無を顕発す。色相既に無ければ、誰が空質を明らかにするや。空もまた是の如し。

釈：世尊は説きたまう、阿難よ、なぜ十二処が本来如来蔵の妙真如性であるというのか。阿難よ、汝しばらくこの祇陀林およびすべての泉池を見よ。色相という現象がどのように生じると思うか。色相自体が眼識の見を生むのか、あるいは眼根が色相を生み出すのか。もし眼根が色相を生むならば、虚空を見る時、色相なき虚空を見て色相は消滅すべきである。色相が消滅すれば、色を見る見もまた消滅す。色を見る見が消滅すれば、虚空を見ることもできず、何ものも見られなくなる。色相がなければ眼根には見が無いはずだが、しかも虚空の無きことを知るのは誰か。しかし汝は明らかに虚空を見ており、見が消滅していない。色相の消滅に従って消えないのは、眼根が色相を生ぜず、別の存在が色相を生じていることを示す。

原文：もし色塵が眼見を生ずるならば、虚空を観る時は色相無く、見は即ち消滅す。消滅すれば全て無く、誰が空色を明らかにするや。故に知るべし、見と色空とは共に処所無く、即ち色と見とは二処虚妄にして、本来因緣に非ず、自然性に非ず。

もし色塵が眼見を生ずるならば、虚空を見る時、色相無き虚空は眼見を生ぜず、この時の能見性は無くなる。ならば一切の想いも皆無となる。この場合、誰が虚空の無色を了知するのか。故に、能見性と虚空および色塵には処所無く、色塵と見性は共に虚妄にして、因緣性にも自然性にも非ず、当然如来蔵の性質である。

ここで仏陀は如来蔵が色相を生じ、この色相が内相分であり、外色の影であり、如来蔵の二次的顕現（あるいは顕発）であることを暗に示す。もし色相が眼識の見を生ずるなら、虚空は色相でないから見を生ぜず、虚空を見る時は見が無くなる。見が無ければどうして虚空を見て知ることができようか。

故に知るべく、眼識の見と色相と虚空には処所無く、色相と眼識の見は共に虚妄にして、因緣性にも自然性にも非ず、如来蔵性より出ず。如来蔵が一切法を生ずるという立論は成立し、世尊は実質的結論を下す：一切法は如来蔵より生じ、唯だ如来蔵心の現わす所なり。

十二処（六根と六識）について、世尊は衆生にこれらが皆如来蔵性であり、如来蔵より生じたことを告げる。六根六識に自体性・真実性無く、生じられた法にして幻化的に不実なり。色相と眼識の見には処所無く、自体性無く、本来より有るものに非ず、故に世尊は虚妄なりと説く。

阿含経における根・塵・識を理解すれば、楞厳経を読むのは容易となる。六根が六塵に触れ、如来蔵が六識を生じ、六識が再び六塵に触れて見が生ずる。実は三者が常に和合触する故に、連続不断の見が生ずる。六根は既に生じ終え、外界の六塵は既に生じられ、如来蔵が再び外界の六塵を内六塵に変現し、勝義根が内六塵に触れ、六識が現れて内六塵を分別す。このように観る時、六根六塵十二処の虚妄性が明らかとなり、その生起源も知られるのである。