原文:阿難よ、水性は定まらず、流れと止息は常ならず。譬えば室羅城の迦毘羅仙、斫迦羅仙、及び鉢頭摩訶薩多等の諸大幻師が太陰の精を求め、幻薬を調合するが如し。これらの師等は白月の夜、手に方諸を持ちて月中の水を承ける。この水は果たして珠中より出ずるか、空中自ら有するか、月より来るか。阿難よ、もし月より来るならば、尚お遠方より珠をして水を出さしむることを得ば、経過する林木は皆な流れを吐くべきなり。流れれば何ぞ方諸の出すを待たん。流れざれば明らかに水は月より降るに非ざるなり。
原文:もし珠より出ずるならば、この珠中には常に水を流すべきなり。何ぞ中夜を待ちて白月の夜を承くるを要せん。もし空より生ずるならば、空性は辺際無し。水は当に際限無かるべし。人より天に至るまで、皆な同じく滔溺すべきなり。云何ぞ復た水陸空行有らんや。汝更に諦観せよ、月は天より陟り、珠は手に持つに因り、水を承くる盤は本人の敷設する所なり。水は何方よりして此れに注ぐか。月と珠は相遠く、和せず合わず。応に水精の従来無くして自ら有るべからず。
原文:汝尚お知らざるか、如来蔵中においては、性水は即ち真空、性空は即ち真水なり。清浄本然にして法界に周遍す。衆生の心に随い、知るべき量に応ず。一処に珠を執れば一処に水出で、法界に遍く執れば法界に満ちて生ず。生じて世間に満つるに、豈に方所あらんや。業に循って発現す。世間は無知にして、惑いて因緣及び自然性と為す。皆是れ識心の分別計度なり。但だ言説有るも、実義無きこと都てなり。
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