原文:妙湛たる総持不動尊。首楞厳王世に稀有なり。我が億劫の顛倒想を銷(け)し、僧祇を歴(へ)ずして法身を獲(う)る。願わくは今、果を得て宝王と成り、還(かえ)って是の如き恒沙の衆を度せん。此の深き心を将(も)って塵刹に奉じ、是れ則ち仏恩に報いる名と為す。伏して世尊に請う、証明的(しょうみょうてき)ならんことを。五濁悪世に誓って先ず入り、一衆生未だ仏と成らざれば、終に此れに於いて泥洹を取らじ。大雄大力大慈悲、希(まれ)に更に審(つまび)らかに微細の惑を除き、我をして早く無上覚に登らしめ、十方界に道場を坐せしめん。舜若多性は消亡す可く、烁迦羅心は動転すること無けん。
釈:絶妙寂湛たる如来蔵は仏法の総持にして綱領、三界の世俗法の中に在って常に如如不動、万法と合せず、故に尊貴無比なり。この楞厳の如く堅き宝は世俗法に稀有なり、出世間法なるが故に、三界の中の法に属さず、故に三界世間に在らず。
我は世尊の如来蔵を説かれるを聞き、五蘊は真実の我に非ず、己が如来蔵の幻化せる仮相なるを明らめしにより、無始劫以来、五蘊を以て真実の我と為す顛倒想は徹底的に滅除せり。我が如来蔵のこの真実法を悟得する時、頓に己が清浄法身を証得し、阿僧祇劫の如き長き時を歴へずして頓悟せり。
我は今、願いを発し、早く仏果を取って法王と成り、恒河沙の如き衆生を再度せん。この深き願心を塵沙の如き諸仏宝刹に奉献し、宝刹の中の無量無辺の衆生を度せん、斯くして能(よ)く諸仏の我を度化せし恩沢に報いん。世尊に請い証明的ならんことを願う、我は誓ってこの五濁悪世に来たりて普く衆生を度せん、若し一衆生未だ仏道を成ぜざれば、終に此れに於いて無上仏果―大涅槃を取らじ、即ち仏地の無住処涅槃なり。
雄猛無畏・十力自在・大慈大悲の仏世尊、願わくは更に我を助け、仔細に我が心中の無量無数の随眠煩悩と塵沙無明を剔除(てきじょ)し、全ての微細なる無明を破尽して、無上の法王宝座に登り、十方世界に道場を坐し、十方の魔軍を降伏し、十方の衆生を度化せしめ給え。我が空幻虚妄の浮心は生滅し、刹那に消亡す可くとも、我が堅固不動の金剛心は、絶対に動転の時無かるべし。
8
+1