原文:化理は住することなく。運運密かに移る。甲は長じ髪は生じ。気は銷け容は皺む。日夜相代わりて。曾て覚悟すること無し。阿難。此れ若し汝に非ずんば。云何ぞ体遷る。如し必ず是れ真ならば。汝何ぞ覚無き。即ち汝が諸行の。念念停まらざるを名づけて幽隠第四の妄想と為す。
釈:身体の変化は決して止むことなく、刹那刹那に密やかに運動変化している。例えば爪が伸び、髪が生え、血気が衰え、容貌に皺が寄るなど、身体の諸機能は日夜新旧交代しているが、自らは全く覚知しない。阿難よ、これらの行陰がもしお前でないなら、何故身体は変化するのか。もしこれらの行陰が真実の自分であるなら、何故悟りを得ず気付かないのか。故にお前の全ての念々止まぬ行陰を、幽隠第四の妄想と呼ぶのである。
これは行陰が幽かに隠れて容易に察知されない妄想であることを説く。幽とは奥深く秘められた意味、隠とは覆い隠された意味で、共に人の識心が捉え難い色身の生滅変異の現象を指す。これらの現象は主観的識心で制御できるものではなく、業力の関係により、身体が時間の流れに従って現す種々の変化である。もし業力が消滅すれば、不老不死となり永遠に若々しくあり続ける。極楽世界の衆生や欲界色界の天人の如くである。
幽隠妄想もまた妄想であり、感知し難い行陰も妄想の産物である。念々として遷流止まず、前念生じて後念滅す。微細な波の如く暗々裡に流動し、生老病死は絶え間なく続く。若し妄想を滅すれば行陰生ぜず、涅槃寂静となり常楽我淨を得る。
0
+1