意識は作主識ではありません

問：意識が主体となる法義について、『八識規矩頌』に「動身発語独為最」とあるほか、審慮思・決定思・動発思の説も、全て意識の主体性を指すのでしょうか。

答：これらは意識の主体性を説いたものではありません。「動身発語」とは、意識が身識と共に身体を動かして身業を造作し、意識が身識と共に言語音声を生起して口業を造作することを指します。身業と口業においては意識の機能が最も優れ、主体をなし、身識は補助的でその機能は弱いのです。

審慮思・決定思・動発思は、意識の思心所の機能を説いたものです。意識にこれらの思心所の機能があるとはいえ、決定を下す能力を有していても、その決定が最終的に有効となるかどうかは、意根がどの程度受け入れるかにかかっています。例えるなら、子供が玩具を買おうと決めても、実際に購入できるかは親の同意次第です。資金を管理する親が支出の決定権を握っているからです。また参謀の部下が軍事演習を提案しても、実現の可否は首長や司令官の判断に委ねられ、部下はあくまで提案する立場で、採否は指導者が決めるのです。

意識は意根に奉仕する存在です。意根が意識の奉仕を必要としなければ、意識を生起させず、従って主体性や決定の余地も生じません。五識にも思心所は存在し決定を下せますが、その決定力は意識よりもさらに弱く、有効性は全て意根の意向に懸かっています。さらに意根が主体となって決定を下しても、その実現可能性は第八識次第です。業種と福徳がなければ、第八識も無力です。従って意根が主体となって何事かを成就させるにも前提条件があり、意根の思うままに何事も成せるわけではないのです。