甲が発する声を、乙は傍で聞き、丙は電話を通じて聞き、丁は録音装置で聞き、戊は金属パイプを通じて聞き、己は真空パイプで聞き、庚は壁越しに聞き、辛はドア越しに聞き、壬は拡声器を通じて聞きます。これらの人々が聞く音に違いはあるでしょうか。なぜでしょうか。真空伝導を経た音、空気伝導を経た音、金属伝導を経た音、空管伝導を経た音は、耳識が識別する音に差異が生じるのです。
音は四大物質色法に属し、その伝達には媒体を必要とします。媒体がなければ伝わりません。媒体が異なれば障害も異なり、伝達速度も変わります。障害とは何を指すのでしょう。四大の微粒子が伝達過程で媒体を通り抜けられず、遮断あるいは吸収される部分があるため、媒体を通過した四大微粒子は変化を起こし、形成される音も変化するのです。通過する媒体が多ければ多いほど、距離が長ければ長いほど、受ける障害は大きく、遮断される微粒子も増え、音はより変質します。
音伝達の究極の目的地は勝義根のブラックボックスです。各人の耳根伝達神経と大脳栄養物質は異なり、勝義根に入る音への影響もそれぞれ違います。故に各人が聞く音には一定の差異が生じるのです。これが示す通り、私たちが聞いている音は真実ではなく、音と呼ぶべき実体は存在しません。ただ大量の電気信号と情報に過ぎず、私たちは皆仮想の情報世界に生きているのです。
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