現量と非量の概念

現量（げんりょう）とは、「現」は現在・眼前・実際・真実・理法に適う事柄を指し、「量」は推量・計量・測量を意味します。現量とは、対象となる法に対し、事実や真理に即した計量・推量・測量を行うことを指します。法を直観する時、即時に見て即時に知り、判断が可能であり、意識による想像・幻想・比較を必要とせず、特別な加工を加える必要がありません。

非量（ひりょう）とは、現量に対峙する概念で、自らの智慧の境界ではなく、理法に適った正しい認識ができず、了別に誤りが生じる状態を指します。意識による思考・分析・想像・幻想・追憶などを通じてのみ知り得ます。非量にはもう一つの意味として、誤った推量・考察・衡量・計量により、事実に合致しない誤った結論を導くことも含まれます。

実際に一切の認識が事実に即しているのは、第八識（阿頼耶識）と成仏後の七識心のみです。成仏以前においては無明が残存するため、七つの識心には程度の差こそあれ非量的認識が存在し、仏陀の智慧に近づくほど非量的認識は減少し現量の境界が増大します。凡夫に近づくほど非量が顕著となり、現量は存在しないか極めて稀です。たとえ眼前の山河を山河として認識する場合でも、これは現量ではなく依然として非量に属します。なぜなら仮相のみを見て、相の本質を見ていないからです。