阿含経において縁覚が十二因縁を順観・逆観する説法がある。縁覚の参究過程を述べる言葉は簡潔で、修行過程の説明も簡略ではあるが、実際の縁覚たちの修行は決して容易ではなく、曲折に満ちた艱難の道程であった。実際の観行思惟は深甚な禅定の中で行われ、意識が思惟する一方で意根も同時に参究するため、結果は必然的に現証となる。禅定がない場合、意識の思惟のみで意根の同時参究を伴わぬため、証得できず理解はできてもそれは無益である。
縁覚の具体的実修過程について仏が詳細を明かさぬのは、後世の者が自ら工夫して現証すべしとの配慮による。余計な説明は人々を理解に留まらせ、修行を不十分にさせるため、簡潔に述べるに止めたのである。簡略な思惟と対話の記述から、縁覚が意識の推論や論理的思考によって結論を得たと解してはならない。それは縁覚を誹謗するに等しい。縁覚の禅定は極めて深遠であり、意識の作用が主導的となることは絶無で、意根の参究思量が常に優位を占める。禅定が深まるほど意根の作用は増し、逆に意識が優位となれば想像推測に頼り、意根を用いることができなくなる。
同様に阿羅漢たちも深い禅定を具え、過去未来の五蘊を観察するに当たり、意識の推論や比量・非量を用いず、意根を伴った現量観察を行う。それらの色身は現在の五蘊身と全く同質であるため、現在を証得すれば過去未来も自ずと明らかとなる。例えば検査すべき製品群がある時、製品が同一であれば一部を抽出検査するだけで全体が判明するが、これは他種の製品が混入していない場合に限る。全く同一である保証のもと、数点を検査すれば全体を把握できる。よって阿羅漢たちの証得は全て現量証であり、あるがままを把捉し、想像や比量の思惟模式を伴わない。禅定なき者には、意識の比量・非量による思惟作用を免れ得ないのである。
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