雑阿含経（二九一）の一

（一）原文：その時、世尊は諸比丘たちに告げられた。「私は内触法を説いたが、汝らはこれを摂取したか」。時に一人の異なる比丘が座より起ち、衣を整え、頭面礼足し、合掌して仏に白した。「世尊の説かれた内触法は、私は既に摂取しました」。その比丘は仏前においてこのように自説を述べたが、世尊はこれに喜びを表されなかった。時に尊者阿難が仏の後ろで扇を執りて仏に扇ぎ奉る。仏は阿難に告げられた。「聖なる法律における内触法は、この比丘の説くところとは異なる」。阿難は仏に白した。「今まさにその時でございます。願わくは世尊、諸比丘のために賢聖の法律における内触法をお説きください。比丘たちは聞きて必ず奉行するでしょう」。

釈：世尊は諸比丘たちに「私が説いた内触法を、あなた方は受け入れることができるか」と問われた。この時、外から来た一人の比丘が座より起ち、衣を整え仏足を礼し、合掌して申し上げた：「世尊の説かれた内触法は、私は既に受け入れました」。この比丘は仏前で様々に自説を展開したが、世尊はどの説にも満足されなかった。そこで尊者阿難が仏の後ろで扇を執り扇ぎながら侍ると、仏は阿難に「聖なる法と律における内触法は、この比丘の説くところとは異なる」と告げられた。阿難は「今こそ説くべき時です。どうか世尊、比丘たちのために聖なる法と律における内触法をお説きください。比丘たちは聞きて必ず受け入れ奉行するでしょう」と申し上げた。

内触法とは何か。それは勝義根における触のことで、眼が色に触れ、耳が声に触れ、鼻が香りに触れ、舌が味に触れ、身が触覚対象に触れ、意が法に触れる。触れて後に識が生じ、識が再び対象に触れるのである。