雑阿含経（二九七）その二

（二）原文：もしまた問うて言わく。いずれのものが行なるか。行は誰に属するか。彼はすなわち答えて言わん。行はすなわち我なり。行は我が所有なり。彼かくの如く言うは命はすなわち身なり。あるいは命は身と異なりと言わん。彼命はすなわち身なりと見る者は。梵行ある者なし。あるいは命は身と異なりと言う者は。梵行ある者またなし。この二辺を離れ。正しく中道に向かう。賢聖世に出でて。如実に顛倒せず。正見の知る所。いわゆる無明を縁として行あり。

釈：もし人また問うて言わく「いずれが行か。行は誰に属するか」と。汝らはすべからく答うべし「行は我なり。行は我が所有なり」と。もし人かくの如く言わば命はすなわち色身なり。あるいは命は変異すれば色身すなわち変異すと。ある者は命はすなわち色身なりと言い梵行を修める者はついに命なし。あるいは命は変異すれば色身すなわち変異すと言い梵行を修める者はついに色身なし。比丘ら命と色身の有無知見に対し、ことごとく離れ、いずれの辺にも着くことなく、正しく中道涅槃に向かう。賢聖世に出でて後、はじめて如実不顛倒の見地あり、よく正知正見を具足し、無明を縁として行あることを知る。行を縁として六識あり、ついに生を縁として老死憂悲悩苦あるに至り、純大苦聚となる。

原文：諸比丘よ。もし無明を離欲して明を生ずれば。彼誰が老死か。老死は誰に属するや。老死はすなわち断じ、すなわちその根本を断つことを知る。多羅樹の頭を截つが如く、未来世に不生の法を成ず。もし比丘無明を離欲して明を生ずれば。彼誰が生か。生は誰に属するや。いたずらに行は誰か。行は誰に属するやと言うに至れば。行はすなわち断じ、すなわちその根本を断つことを知る。多羅樹の頭を截つが如く、未来世に不生の法を成ず。もし比丘無明を離欲して明を生ずれば。彼無明滅すればすなわち行滅し、いたずらに純大苦聚滅す。是を名づけて大空法経と為す 仏この経を説きたまいし已り。諸比丘仏の説きたまう所を聞き、歓喜して奉行せり。

釈：諸比丘らよ、もし貪欲を離れ無明を滅尽して明を生ぜば、「誰に老死ありや。老死は誰に属するか」というこの問題に対し、老死は断尽し、老死なく、老死は誰にも属さざることを知る。かくの如く生死は根本より断じ尽くされ、あたかも多羅樹の樹頭を截断するが如く、未来世に再び生ずることなし。もし比丘貪欲を離れ無明を滅尽して明を生ぜば、「誰に生ありや。生は誰に属するか」、いたずらに「誰に行ありや。行は誰に属するか」というこれらの問題に対し、生いたずらに行もまた断尽することを知る。生死は根本より断じ尽くされ、あたかも多羅樹の樹頭を截断するが如く、未来世に再び生ずることなし。

もし比丘ら貪欲を離れ無明を断尽して明を生ぜば、無明滅すれば行滅し、行滅すれば六識滅し、六識滅すれば名色滅し、名色滅すれば六入滅し、六入滅すれば触滅し、触滅すれば受滅し、受滅すれば愛滅し、愛滅すれば取滅し、取滅すれば有滅し、有滅すれば生滅し、生滅すれば老死憂悲悩苦滅し、いたずらに純大苦聚滅す。これを大空法経と名づく。