この世界は絶え間なく生滅変異を繰り返し、ついには空無に帰するのです。まして私たちの小さな肉身は、独りで存在し続けることなどできず、より速やかに変異し、長く留まることはできません。日々、自分自身や周囲の一切に執着するのは、本当に無意味なことです。
人は皆いずれ消滅する定めにあります。命あるうちに生死の大事に目を向け、取るに足らない些事にこだわるべきではありません。飲食や排泄といったことは重要ではなく、名誉や利養も重要ではなく、生活の豊かさや順調さも問題ではありません。肝心なのは死後の行方、来世のことを考えることです。命が尽きれば、この世での全ての経験は過ぎ去った雲霞の如く無意味となり、激しい争いも人我の是非も消え去って取るに足らぬものとなります。未来世に持参できるものに心を配り、来世の資糧を蓄えることに時間を費やすべきです。持って行けぬものに心を煩わす必要はありません。
生活が順調で家庭が円満、事業が成功し名声権勢が増大する時、それに満足する心は貪愛の成就であり、迷いの現れです。求めている方向が誤り、重心を失っています。いつかこれらが消滅する時、苦痛と喪失感に苛まれ、落胆することでしょう。盛んな時に道業を追求すべきです。求めずして一切を得、一切を得ながらも得たという意識なく、心は解脱自在でありながら解脱感も自在感も持たない。これが即ち極楽の境地です。
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