有相戒と無相戒

一切の法の証得には意根の証得が必要であり、意根が証得されれば自然と自覚的に戒めを保ち守るようになります。意識による戒律の解釈が意根に影響を与えない限り、悪業の因縁が具足した時、意根は依然として自らの煩悩習気に従って身口意の悪業を造作し、意識では容易に制御できません。意根が関連する法義において証得を得たならば、いかなる外縁に遭遇しても自らの習気に依って再び身口意の悪業を造作することはなく、それら虚妄の法に心を留めて造作することはなくなり、ましてや悪法を造作しようとは思わなくなります。

戒はまず意識によって受持守護され、次第に意根を牽引して意根に戒を守らせます。意根が戒を守ることが習慣となれば自然と自覚的に戒を守るようになり、この段階ではもはや意識による監督や規範を必要としません。意根が戒を守れず意識による規範と監督が必要な段階は、意識の持つ有相の戒であり、これは凡夫位から三果の聖人・地上の菩薩に至るまでの段階です。この段階の者は必ず有相の戒を持たねばなりません。意根に初禅定の滴水のような潤いがなく、殊勝な身心の覚受功徳がなければ煩悩を断除できず、必然的に煩悩によって悪業を造作し、戒律を保全することができなくなるからです。

我見を断除し初禅定を修得した後、意根は次第に煩悩を断じ、心は自然と清浄になります。この時はもはや意識の監督や監視を必要とせず、無相の心の戒を持することができます。世俗の相に過度に執着する必要がなく、いかなる縁に遭遇しても心が矩を越えることはありません。心の行いが無いため、衆生を救護するための色身における造作は犯戒に属さず、これによって三悪道に堕ちて悪報を受けることはありません。この境地に至らない者が有相の戒を持たず、地上菩薩の無相戒のみを行じるならば、戒律に関わる問題が生じた時必ず犯戒行為に属し、必ず悪報を受けることになります。因果の道理は微塵も曖昧にできません。