涅槃は心解脱と慧解脱を成就した阿羅漢が証得する境地であり、禅定のみに関わるものではなく、主に解脱の智慧に関わるものである。初禅・二禅・三禅・四禅を修得したとしても、生死輪廻を脱することはできず、依然として輪廻の中にある。これは生死の根源である我見を断除していないため、我に関わる煩悩が未だ存在し、煩悩に縛られて心が解脱せず、涅槃を証得していないからである。
心の解脱は小乗の三果聖者の境地であり、初禅以上の禅定を有するだけでなく、我見を断じ、貪欲と瞋恚の煩悩及び三つの結縛を断除した状態、すなわち有余涅槃を証得した段階である。さらに我慢と我執を断じ、三界への貪愛を完全に断尽し、解脱の智慧を獲得すれば、無余涅槃に入ることができる。
よって禅定のみでは煩悩を断除できず、ただ一時的に鎮圧するに過ぎず、心も智慧も解脱しないと説かれる。心解脱は智慧と禅定を兼ね備え、煩悩を断除して得る解脱の境地であり、慧解脱も同様に解脱の智慧と禅定を具え、一切の煩悩を断じた上で得られる解脱の境地である。
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