戒に戒なしとは、戒法は因縁によって生じた法であり、本来存在しないという意味であります。娑婆世界の衆生の身口意が清浄でなく、心が染汚されているが故に、仏陀は弟子たちの身口意行を律するために戒法を制定されました。仮に五陰の身がなければ、戒法によって束縛されることもなく、五陰が修行によって清浄無為に達したならば、やはり戒法による束縛は不要となります。また本来の心である如来蔵には色身がなく、身口意行もなく、染汚もないため、そもそも戒法で束縛する必要がありません。如来蔵は戒を受けることも、守ることも、ましてや破ることもありません。五陰の色身こそが戒を受け、戒を守り、時に戒を犯す必要があるのです。故に戒は本来存在せず、戒は後天的に形成された有為有滅の法、すなわち虚妄なるものであると説かれる所以であります。
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