仏陀はなぜ無色界で説法をしなかったのか

無色界の天人には身体はありませんが、意識は存在します。意識があれば識蘊もあり、意識はあるものの仏法を聴聞することも、ましてや仏法を思惟することもできません。身体がないのは人間ではありませんが、天界の存在であり、高次元の生命体です。受・想・行という五遍行心所の法は八識すべてに備わっており、無色界の天人にも意識による受想行、意根による受想行、さらに第八識による受想行が存在します。

仏陀は無色界天で天人に説法できますが、色界の天人も人間も鬼神も聴くことができず、無色界の天人自体が極めて少なく、すべて外道で常に禅定に入っているため、彼らに説法する必要性はまったくありません。別の観点から言えば、二禅定においてすでに仏法を聴くことができず、まして四禅以上の禅定ではさらに説法を聴き思惟することができないため、仏陀は無色界天で説法されないのです。

二禅定は一瞬にして入定でき、その後は一切の認識が途絶えます。出定もまた一瞬で、出定後に初めて自分が入定していたことを知り、身体が非常に快適で心情が特別に愉悦し、頭脳が極めて明晰であることを感じます。微かな音さえも耳識を喚起すれば、即座に出定します。意根に未練の事柄があれば、時至って重要な事柄を誰かが指摘すれば、蚊の羽音のような微音でも感知でき、それによって出定するのです。入定前は非常に騒がしい音の中でも、心は速やかに静寂に至り、雑音が次第に微弱となって遂に聞こえなくなり、人は入定します。

仏陀が華厳経と地蔵経を説かれたのは欲界天と色界天においてであり、その後人間界に伝わりました。その他の経典はすべて人間界で説かれ、これによって天人も降りて説法を聴き、鬼神や畜生も説法を聴くことができ、より多くの衆生を救済されたのです。