善悪業報占察経 巻下

原文：真如実観を修学する者は、心性の不生不滅を思惟し、見聞覚知に住することなく、一切の分別の想を永く離れます。次第に空処・識処・無所有処・非想非非想処などの定境界相を超え、相似の空三昧を得るに至ります。相似の空三昧を得る時、識・想・受・行の粗い分別相は眼前に現れず。この後は善知識の大慈悲に守護されつつ修学を続け、諸々の障礙を離れ、精進を怠らず、次第に心寂三昧に入ることができるようになります。

釈：真如実観を修める者は、心性の不生不滅性を観じ、次第に見聞覚知に執着せず、一切の分別念想を永遠に離れます。禅定は漸く空無辺処・識無辺処・無所有処・非想非非想処などの境界相に至り、相似の空三昧を証得します。この三昧を得た後は、識蘊・想蘊・受蘊・行蘊及び粗い分別相は現前せず、唯意識の微細な分別のみが残ります。その後は大善知識の大慈悲に守られ育まれるため、一切の障礙を離れ、休むことなく精進を続け、次第に心寂三昧に入るのです。

原文：この三昧を得た後は、直ちに一行三昧に入ることができます。一行三昧に入れば、無数の仏を見て深広な行を発し、心は堅固な信位に安住します。即ち奢摩他と毘婆舎那の二種の観道に対して決定的な信解を生じ、確固たる方向へ向かいます。世間の諸禅三昧の業を修学するも、何ら楽著することなく、あまねく一切の善根菩提分法を修し、生死において怯えることなく、二乗を楽しまず。二観心を修習する最妙の巧便に依り、衆智の依る所となり、行の根本となる故です。

釈：この三昧を証得すれば、直ちに一行三昧に入ります。一行三昧に入れば、定中に無数の仏を見て菩薩の広大深遠な行を発起し、奢摩他と毘婆舎那の観行法に対する確固たる信解を得ます。世間のあらゆる禅定境界を修めても三昧に執着せず、菩提道の一切の分証法を修め尽くし、生死に畏れなくなり、二乗を求めず。奢摩他と毘婆舎那という二種の観心法こそ、一切の智慧が依拠する修行の根本であるからです。

原文：次に、上記の信解を修学する者に二種あります。何等が二か。一は利根、二は鈍根なり。利根の者は、既に一切の外的境界が唯心所現であり、虚妄不実で夢幻の如きものと知り、疑念なく、五蓋が軽微で散乱心少ない。かかる者は直ちに真如実観を学ぶべきです。鈍根の者は、未だ一切の外的境界が悉く唯識所現であることを知らず、虚妄に執着し、五蓋が頻起し、心調伏し難い。先ず唯心識観を学ぶべきです。

釈：利根の者は早くから外界が心識の所現であることを悟り、五蓋が薄く散乱少ないため真如実観を修します。鈍根の者は外界の虚妄性を知らず、執着深く五蓋が盛んなため、まず唯心識観を修学します。唯心識観は六塵境界が妄心の分別によって現れることを観じ、真如実観は一切法が真如自性より現れる深層の観法です。両観法は得られる智慧の境地が異なります。