人が死亡する際、意根とアラヤ識が色身から離れると、色身は死体となり、元来衆生の単独のアラヤ識によって保持されていた状態から、多数の衆生のアラヤ識が共同で保持する状態へと変化します。この時点でそれは無情物となります。無情物は全て四大によって構成されており、その破壊時には四大が漸次的・秩序的に絶え間なく無情物から各衆生のアラヤ識へ回帰します。この過程の所要時間は一定ではなく、衆生の業力によって決定され、また無情物の堅固さにも関わります。死体の腐敗はアラヤ識が色身を離れた時点で始まりますが、最初は感知し難く、腐敗速度は周囲の温度・環境、および死体内の水分量に依存します。温度と湿度は細菌繁殖の条件であり、細菌が増殖すればするほど死体の腐敗は加速します。最終的に残る骨は宇宙山河大地の器世間の一部となり、時を経て風化分解して消滅します。
色身が死亡直後の短時間内においては、依然として単独のアラヤ識によって保持されており、識心が再び現れる可能性もあります。俗世間における蘇生説がこの理に当たります。故に人が死亡直後、アラヤ識と意根が完全に離脱していない段階での臓器移植は、いわゆる数時間以内という短時間内に行われる必要があります。この数時間内においては身体器官がアラヤ識によって保持され続け、神経・細胞・筋肉組織が機能を保っています。この時点で他者への臓器移植を行う場合、双方の意根が相容れなければ拒絶反応が生じますが、意根が和合し交情の深い者同士であれば拒絶現象は発生せず、アラヤ識の引継ぎが円滑に行われます。意根が色身の臓器に執着し他者への提供を拒めば、二つのアラヤ識の引継ぎが滞り、身体的拒絶反応という形で不具合が生じる可能性があります。
例えば人の指が切断された場合、短時間内は指に温度が残り血管が機能しています。この時間枠内であれば血液循環が可能で、神経も機能しているため再接続が可能です。適切に接合すればやがて癒合し、可動性も回復します。しかし時間が経過し指が共業衆生のアラヤ識によって共同保持される段階に至ると、再接続しても木材を接ぐが如く機能しなくなります。
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