意識心が観察し得ない法は存在しないとは限らない

思考より禅定に入り、深い禅定において表面は念も思想も思慮もないように見えますが、実際には意識心に念や思慮がなくとも、意根はなお功夫を重ね思量を続けています。ただ意識心では観察できないだけなのです。意識が知り得ない事柄や、観察できない法が存在しないとは限りません。

故に意根は一切法の運行において独特の作用を有しており、意識が観察できないからといって意根に作用がないわけではありません。参禅中、禅定中、睡眠中、昏迷中において、意根が起こす一切の作用、意根の心所法の運行は、意識には観察できなくとも、意根に作用がないことを意味せず、意根の運行が停止したことを示すものではありません。

我々の中には禅定の智慧が不足している者がおり、自らが理解できず観察できない意根の心所法について、有無を論じたり是非を説いたりすべきではなく、沈黙を保ち心中に疑いを留めることが智者の在り方です。

意根の神秘的な機能作用は極めて多く、我々の現在の思考や想像を超えています。浅薄な自説に固執せず、固有の有限的な理論に封じ込められなければ、将来より多くの意根の機能作用を観察し得る可能性があります。

実のところ仏道修行の究極とは、意根と第八識の機能作用を全て開発観察し、悉く証得することに他なりません。それらを成就すれば仏となるのです。意根と第八識の法を全て探究し証得したならば、修すべきものは何も残らず、大乗の無学に至るのです。

現在の自己に観察弁別する能力のない法について、軽率に結論を下さなければ、誹謗の業を作らず、自らの道業に障害を設けません。これが智者たる者の選択です。仏典は常に菩薩に対し、深遠な法を聞いて恐れず、深遠な法を聞いて謗らず、甚深なる法義に安んじて忍ぶべきことを説いています。