諸法無我（三）

第八識の無我性について、第一に第八識には生滅を繰り返す種子が含蔵されており、その種子は変異して固定されないため、第八識は真実不変のものではなく、常恒でもない。したがって完全に真実の我とは言えない。生滅変異しないものが真の我である。第二に、第八識は自らが真実の法であることを知らず、主宰性も有していない。第七識は我を有し、主宰することができ、一切の法を我と見做すが、第八識はこれと正反対である。第八識は真我であるが、この真我は無我性を具える。五蘊は仮我であり表面上は我性を有するが、如来蔵こそ真我である。これは我々が付与した名称であり、第八識自体はこれを自覚せず、この事実を認識していない。

五蘊十八界が縁起によって生じる一切の法も、全て第八識の執持作用によって顕現する。第八識がなければこれらの法も存在せず、故に一切の法は無我にして虚妄であり、五蘊自体に実体はない。このように法無我の一部を証得すれば道種智を得る。初地に入れば百法における無我を証得し鏡像の如き観を成就し、二地に入れば千法の無我を証得し光影の如き観を成就し、三地に入れば万法・無量法における無我を証得し、智慧は次第に深遠となる。諸法無我の内実は無量無辺にして、諸仏世尊のみが完全に証得し、究竟の円満なる無上智者となる。

大涅槃経において仏は、仏地の無垢識を常楽我淨と説く。常とは究竟して再び変異せず、含蔵する種子に生滅変異の現象なきを指す。我とは、無垢識が二十一の心所法を具え、真実の我として完全に我性を具足することを示す。諸仏が徹底的に無我であるとは、仏の七識心が究竟的・完全無欠の無我を達成したことを意味する。これ以前は未だ究竟的無我ではなく、一部あるいは微量の我が残存しており、仏陀となることができない。これを断尽して初めて成仏する。識心は自証分を有し、自己を反観する能力を持つが、これが我性である。仏地の無垢識は自らの存在を証明し、自己を反観できるため我性を具える。

我の存在を否定し一切法の無我を説くのは小乗の修行法である。外道の断滅空も一切法を空とし、真実なく我なきものと説くが、彼らは真実不滅の第八識真我の存在を認めない故に外道と呼ばれる。小乗声聞は真我たる第八識の存在を認めつつも証得できず、外道はこれを全く認めない。これが外道と呼ばれる所以である。