意根の倶生我執と貪瞋痴の煩悩

問：倶生我執は無始時より来たり、虚妄の熏習によって種子となり意根と持続的に相応するものですが、意識は毎世新たに生じるもので、前世の記憶と相応できません。道理から言えば、倶生我執があるべきではない。しかし意識の思惟は意根の習気に牽引されます。例えば：前世の仇人を見た時、意識は瞋心を生じますが、その原因を知りません。やはり意根が前世の業種に縁り、意識を牽引して瞋心を起こさせるのです。

答：倶生とは生まれながらに具わる意味です。倶生我執や倶生煩悩は、いずれも意根が生来より具える貪瞋痴慢などの煩悩を指し、無始劫より持ち続けてきた我執の習気です。故に意根は業種と相応し、無始劫以来どのような種子を造り蓄えてきたかによって、意根はそれ相応の心行を顕現し、種子を現行に変じさせ、意識の心行を主導して業種と相応させます。

意根は生命の出生に伴って生じるものではなく、一期毎の生命、あらゆる生命形態に伴って存在するもので、生命と倶にある故に倶生と呼ばれます。また意根は無始劫より無明の遮障によって、永劫にわたり五陰身を我・我所と執着してきた故に、倶生我執と呼ばれるのです。

意識には倶生性がありません。嬰児が生まれたばかりの時、母胎内の意識すらも新たに生じた全く新しいもので、過去世や無始劫以来の煩悩や習気を帯びていません。今世の一切の法については改めて学習しなければ習得できず、ただ習得の程度や速度は累世の業種に関わり、意根と業種の熏染によって促されます。意識は一方で今世の生存環境の熏染を受け、縁に随って善悪性・非善悪性の心所法を生じ、他方で意根の熏染を受けます。意根が善ならば意識も善となり、意根が悪ならば意識も悪となります。

故に、意根が貪瞋痴の煩悩を生じる時、多くは意識の弁別や選択を待たず、意根が主導して意識に理由もなく貪瞋痴の煩悩心行を生じさせ、貪瞋痴の煩悩業行を造作します。意識の理性は時に応有の作用を発揮できません。業種が現行しようとする時、意根の情動や習気が現出しようとする時、意識に理性があっても対処し難く、まして大多数の人の意識は理性を具えていないのですから、煩悩は氾濫することになります。