瑜伽師地論選講

原文：さらに三種の諸々の煩悩の趣きがあり、これによって有情が生死を流転する。第一の煩悩の趣きとは、勝れた欲に対して意を発して希求することをいう。第二の煩悩の趣きとは、色界・無色界における勝れた自體に対して意を発して希求することをいう。第三の煩悩の趣きとは、邪なる解脱に対して意を発して希求することをいう。

釈：さらに三種の煩悩に向かう修行の道があり、これによって有情の衆生は生死を流転する。第一は、衆生が善法欲によって、善法欲に縛られ、三界を出離することができず、必ず三界の中で生生世世にわたって仏法を追求し、成仏に至るまで続く。これは大いなる心を発した菩薩の善法欲である。三界を出ない限り、三界における苦悩があり、些細な苦受がある。これが第一の煩悩の趣きである。

第二は、衆生が色界と無色界の殊勝な果報に対して心を起こし希求するため、生死に縛られ解脱を得られないことである。色界と無色界の衆生は、その自體が欲界の衆生より勝れており、殊勝な果報を持つ。しかし衆生は色界と無色界の殊勝な果報を希求し、色界と無色界の禅定を求め、色界と無色界の福徳享受を願うため、色界と無色界の果報に縛られ、三界を出離できず、三界の生死の苦しみを招く。これが衆生の第二の煩悩の趣きである。

第三は、衆生が邪なる解脱に対して心を起こし趣求するが、知見と修行方法が誤り理に適わないため、解脱を得られないばかりか、生死の深淵に陥り続けることである。解脱への欲望はあるが真実の解脱法に出会わず、外道の法に遭遇し、外道を修行し、理に適わぬ外道法によって解脱を求めようとする結果、外道の邪見に縛られ解脱を得られない。これが第三の煩悩の趣きである。

正法への希求であれ邪法への希求であれ、究極の希求は意根によって発起される。最初は意識がこれら二つの法に接触することで発起し、次第に意根に影響を及ぼし、精進して正法あるいは邪法を修学するに至り、ついには解脱を得るか、あるいはより深い生死の束縛に陥ることとなる。