眼識と意識の和合作用（三）

もし色境がなくなれば、識の生起には重要な縁が欠けることになります。第八識である阿頼耶識は六識を生じることができず、当然六識の存在もなくなります。色境が消滅する時、元来色境を了別していた眼識と意識は直ちに滅していき、識が滅すれば色境を了別することもできず、了別の対象もなくなります。故に阿頼耶識は無始劫以来、一瞬たりとも閑暇を得ることなく、休むことなく停止することなく、このように労を厭わず絶え間なく運作し続け、私達に無私の奉仕をしておられるのです。

もし人が「眼識だけで色を見ることができる」と言ったら、これは可能でしょうか。不可能です。一つの色相には顕色・形色・表色・無表色があり、顕色とは色彩、青・黄・赤・白の色相を指します。眼識は顕色のみを分別でき、形色・表色・無表色を分別することはできません。人が色を見る際、単に色境の顕色を見るだけでなく、色の形状や内包、形色・表色・無表色をも了別し、色の本質は何か、色の名相は何かを知らなければ、分別を完成させることはできません。従って意識の参与による了別がなければ、色境を明瞭に知ることはできないのです。色彩以外の色は全て法処所摂色に属し、これらは意識心によって了別されます。青黄赤白等の色彩のみが眼識によって了別されるのです。眼識と意識の二者が共同で和合して了別することにより、初めて私達は色境の実体を知ることができるのです。

従って一つの色を観察し、その色を明瞭に見極め、見た色境の実体を分析判断するには、必ず眼識と意識が共同で和合運作し、二者が共に分別することにより、初めて面前の物体が何であるかを知ることができます。面前の書物、机椅子、杯といった物体には色彩だけでなく、長短円方の形状、材質・質感などの内包があり、分別すべき内容は多岐にわたります。眼識のみでは決して完全に了別できず、意識が眼識と同時に分別することが必要です。二者が和合して運作することにより、初めてこれらの物質的色法を明瞭に見極めることができるのです。