六識の現量了別（四）

鼻が香気を嗅ぐ際、香りは現前に存在する現量境であり、鼻識と意識は共にこれらの現量境を了別し得ます。鼻識は第一刹那に香気が鼻粘膜を刺激する程度を現量で了別し、続いて意識は第二刹那に香りが芳香か悪臭かを了別します。その後、意識はどの種類の香りあるいは悪臭であるか、香臭がどの程度に達しているか、どの物体から発せられたか、自己からどの程度離れているか近いか等を了別します。これらの法塵に対する意識的現量了別には、比量や非量の了別が生じる可能性もあります。意識が香気に関する知識を完全に有していないため、純粋な現量了別とはなり得ません。智慧が円満に達した時のみ、一切法を現量で了別することが可能であり、これは仏陀のみが成し得る境地であります。

もし仏陀が比量や非量による了別を必要とするならば、仏陀は一切種智の保持者とは言えず、その智慧に未だ円満ならざる点が存在し、現量で知り得ない法が存在することを示します。その場合、一切種智を具えた仏陀とは称されず、妙覚菩薩に留まることとなります。仏陀は現量によって世間の一切法を円満に了知し、比量や思索を要することなく、智慧徳能を円満具足されているが故であります。

飲食を味わう際、舌識は飲食の粗い味塵を現量で了別し、第一刹那の了別は必ず舌識によるものであり、第二刹那は意識による了別となります。第二刹那以降は両者が同時に了別します。意識心は飲食の微細な味塵を了別し、具体的な甘酸苦辛鹹淡とその程度、味が強過ぎる場合に飲食を吐き出すべきか否かを判別します。これは意識の現量了別の結果であります。当然ながら比量や非量の了別も含まれ、記憶に基づく了別は比量、飲食の味を想像するのは非量となります。味塵に関する知識が限定的である場合、比量や非量による了別を用いることとなり、その結果は往々にして誤りを生じます。現量了別においてさえ時として誤謬が生じ、完全に正確とは限りません。意識が比量や非量で了別する際、これは意識の独頭境界であり、前五識はこの了別に参与しません。