瑜伽師地論（十一）

原文：異なる縁が会遇するとは、楽受の触に縁することをいう。楽受を受ける時に苦受の触に遇い、苦受の触に縁する時に楽受の触に遇う。不苦不楽受の触に縁する時、不苦不楽受を受ける際に楽受の触あるいは苦受の触に遇う。また貪りを持つ者が瞋恚に会遇し、貪りの煩悩が止滅する縁によって瞋恚の煩悩が生起する。これと同様に、瞋恚や愚痴を持つ者が異なる種類の煩悩生起の縁に遇うこともまた然りである。このように眼識が現前に存在する時、声・香・味・触などの境遇に会遇する。これを八種の変異因緣と称する。一切の有色法及び無色法の全ての変異は、この八種の因縁によって生じる。これを超え増すものは更に存在しない。

釈：異縁会遇とは、楽受の触に縁する場合、本来楽受を受けるべき時に苦受の触に遇い、苦受の触に縁する場合に楽受の触に遇い、不苦不楽受の触に縁する場合に楽受あるいは苦受の触に遇うことを指す。また貪りの者が瞋恚の縁に遇い、貪りの煩悩が止滅する縁によって瞋恚の煩悩が生起する。同様に瞋恚や愚痴を持つ者が異質の煩悩生起の縁に遇うことも同様である。眼識が現前する時、声・香・味・触などの境遇に会遇する。これらを八種の変異因縁という。一切の物質的現象及び非物質的現象の全ての変化は、この八種の因縁によって生じ、これ以外に超越あるいは増加する要素は存在しない。

ここでの「異」は変化を意味し、遇う縁が変化すれば、因が変化し結果も変化する。因縁の変異は大別してこの八種に分類され、細分すれば更に多様となる。縁が変化する故に無常であり、結果が変化する故にこれまた無常である。因縁の変異によって無常の理が完全に顕現される。