意識の妄想は実修に代わりえない

望遠鏡を用いれば、極めて遠くの星空を望み、広大無辺の海洋を望み、天涯の山川大地を望むことができます。しかし身体は千山万水を隔てています。どれほど遠く高くを見渡そうとも、それは身を以てその境に臨むことにはなりません。既定の目標は、指先で到達できるものではなく、空論で語り得るものでもなく、足で計り続ける必要があります。故に歩みを始めねばなりません。一歩一歩歩むのであって、走らず跳ばず、まして飛躍することなく、そうしてこそ確実に目的地に到達できるのです。道のり遠しと嫌わず意識の妄想に耽らず、辛苦を厭わず意識の空想に逃れず、まして路銀高しと嘆いて意識の妄想にふけってはなりません。空想に耽れば結局は幻境に過ぎず、王土を思うなら身を以てその境に臨み、意根を以て堅実に歩み、一歩ごとに土地を測り、寸土ごとに触れねばなりません。

時に仏法を学ぶと、意識はあたかも自らが一切を変え、風雨を呼び起こし、力を込めれば何でも成し得、成仏さえ難事ではないと錯覚します。しかしながら、自らの一念すら制御できず、一つの事に固執して放せず、身口意の行いも何も変えられません。

これは如何なる所以か。意根の実証が無いため、意識が憶測で何かを考え、理解し、思案しても無益であり、地に足が付かず、力を発揮できず、常に為す術無きを覚えるからです。故に成仏が容易に思えても、謹んで三阿僧祇劫を経ねばならず、証果明心が白菜を食べる如く容易に思えても、一歩ずつ四正勤・七覚支・八正道を修め、謹んで戒を保ち定を修め、四念処を実践し、着実に菩薩の六波羅蜜を修めねばなりません。仏の説くこれらの修行道は無用の飾りではなく、必ず実践すべきものです。大多数の者は生涯をかけてもこれらの前提条件を修め終わるのが精一杯であり、これらの条件が円満具足せぬまま意識の推理と妄想で証果明心を図るのは、何の役にも立ちません。

何故か。実修実証は意根に関わるものであり、三十七道品と菩薩六度を修める過程で、常に意根を薫修し、意根の固着した知見を改めます。修めが到位して初めて意根の知見が改まり、一切が意根の変化に伴って変化し、この時に証果明心が叶うのです。しかし意根は自らの固執した知見を容易に改めず、意根が変わらねば何も変わりません。故に仏法を学ぶには謹んで実修すべきで、意識の妄想は無益です。明日にも成仏できると思えども、三大無量劫を経ねばなりません。或る者は高説して「相を取らず分別せず、心に住まわず執わず」と語りますが、これは何地の菩薩の段階に至って初めて言えることで、地前の菩薩には到底できません。意識で我見を断ち、意識で証果し、意識で明心し、意識で成仏するなど、まず夢の中で試みて、果たして通用するかどうか確かめてみるがよいでしょう。