理に基づく比較対照と想像は実証に等しからず

菩提の意味を総括すると、仏となる道において具足すべき一切の仏法を指し、その階層は浅きから深きまで多数の段階を有する。最初は我見を断つことであり、初果から俱解脱の四果を含み、その後は大乗の明心によって菩提の根本である如来蔵を証得し、仏地における四智円明に至る。如来蔵を証得すれば菩提を証得したことになるが、全ての菩提を証得したことにはならない。なぜなら如来蔵の体性は深広無辺であり、全てを証得して初めて阿耨多羅三藐三菩提を証得するに至る。故に証得は一つの始まりに過ぎず、多くの法を一つずつ証得してこそ菩提を円満するのである。

もし単に如来蔵が至る所に参与し、一切の法が即ち如来蔵であり、全体が即ち真如であるという理論を書物から意識的に知るだけで、意根に関与せず、意根と無関係であるならば、これは自己が実際に証得した後の結論ではなく、単なる言葉の学びに過ぎない。実際に証得していなければ、理解も十分に深まらず、その然りを知ることさえ叶わず、ましてや其の所以然を知る由もない。では生死の問題をどう解決できようか。もし眼界を一条の隙間開けて、その奥を少し窺い知ることができれば、少しばかりの真実を知るに至るだろう。

或る者は全体即真如という理論を知ると、小賢しい知恵を働かせ「これも真如、あれも真如、至る所真如」と想像を逞しくし、自ら悟りを開いたと称して人に印可を求めに行く。

もし如来蔵が如何に具体的に存在し顕現するかを観ることができれば、それは大変優れたことで真の開悟と言える。仏法を学ぶにはまず我見を断つことが要諦であり、五陰無我の理を徹底的に究明してこそ、その後明心は難しくない。例えば誰もが電流が電線の中にあると知りながら、電流そのものは見えず、その応用（炊飯器で飯を炊き、洗濯機を動かす）のみを見る。電流に触れて痺れ震えても、それは電流を証得したことにはならない。洗濯機が衣類を洗うのを見て電流の存在を知るのは理論的知識に基づく理解が主であり、電流の具体的働きを未だ知らなければ証得とは言えないのである。