経題——金剛般若波羅蜜経
般若とは、世間を超越した大いなる智慧であり、世俗の智慧とは全く異なるものであるため、智慧とは訳さない。世俗の智慧は三界の世間における生存の智慧であり、欲界には男女が存在するため男女の欲があり、子を産み育て子孫を繁殖させ、富を創造し、生活の資具を製造し、研究や発明創造を行い、政治や事業の経営に携わる。天人のあらゆる生活資具は全て心より生じ、常に享楽にふけっている。色界の天人たちは殊勝な禅定の境地にあり、男女の区別がなく飲食も必要とせず、ただ禅定の楽しみを享受する。無色界の天人たちには色身はないが、深遠な禅定があり、心は定中にあって定福を享受する。三悪道の衆生は常に苦痛を減らす方法を模索し、衣食を得て生存しようとする。これら全てが三界世間の智慧の境地と範囲であり、生死輪廻を出ることはない。
一方、世間を超越した智慧——般若は三界の内外に属さず、三界の法に摂されるものではない。したがって、般若を直接「智慧」と訳すことはせず、世俗の人が「我々にも智慧がある、政治・経済・文化・心理など各分野・各業界に高度な智慧がある」と誤解するのを避けるためである。しかしこれらは全て世間の生滅する無常の法であり、般若智慧によって生み出され、般若智慧に依って存在し発展するものである。般若の智慧は無量無辺にして広大であり、宇宙虚空もその中に含まれる。無量の諸仏国土、無量の華厳世界、無量の世界海が全て虚空中に建立され、無量無際の有情衆生の如来蔵によって共同で顕現され、一真法界と呼ばれる。十法界(四聖六凡)は全てこれより生じる。人間の宇宙船がどれほど遠くへ飛ぼうとも、その先に虚空の外は存在せず、虚空は般若の心の外に出ることはない。
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