衆生が道眼を開く前に、往々にして邪を正とし、正を邪とし、逆さまに錯乱するものでございます。あるいは名声ある師匠のみを認め、名高い師と明らかなる師の区別を知らず、道ある者必ずしも名高からず、名高い者必ずしも道あるにあらざることを悟れません。名師と明師を見分けてこそ、はじめて法に依り人に依らぬ境地に至れるのです。正法を広める功徳は甚大なれど、誤り伝えれば、過ちの種が衆生の心に植え付けられ、生々世世にわたり悪芽を出し悪果を結びます。仮に善知識来たりても是正難しく、衆生は皆先入観に縛られるが故でございます。真実の仏法は衆生と相応し難く、衆生が普く慣れ親しむ道理と異なるため、衆生は排斥の念を起こし、心を翻すこと甚だ困難でございます。法を弘めるには慎重を期さねばなりません。
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