『父子合集経選講』

仏は王に告げたまわく「然り、然り。愚痴なる異生は、寡聞にして智なく、可意の触に於いて愛楽を生じ、心に染着を生ず。かくの如き業を造る。身業三種、語業四種、意業三種。彼の業を造作すれば、刹那に遷謝す。是の業滅したる已後、東方・南方・西方・北方・四維・上下の間に依りて住せず。命終の時に至り、先に作ったる所を見る。心想の中に現じ、彼が眠りから覚めて夢中の事を憶うが如し。最後の識滅すれば、自業現前す」

釈して曰く：仏は「大王、まことにその通りです。愚かな異生の凡夫は、見聞が狭く智慧がなく、自らが喜ぶ触境に愛着を生じ、心に貪欲の染着を起こして愚かな業を造ります。身三・口四・意三の悪業が現れます。これらの業を造った後、業行は刹那々々に移り変わって消滅します。業行が滅した後は、東西南北・四維上下のいずれの方向にも依存して留まりません。しかし命終の時が来ると、自らがかつて行ったことが心の中に現れます。あたかも眠りから覚めた者が夢の中の出来事を回想するように、最後に六識が滅すると、業報が現前するのです」

愚痴とは無明であり、何も理解していないことです。五陰が何たるかを知らず、五陰の虚妄も知らず、万法の虚妄も知らず、この仮の我が因縁和合によるものだとも知らず、どうすればそれを破れるかも知らず、どう六道輪廻を脱するかも知らず、どう菩薩の果位を証得するかも知らず、どう自らの本来の面目たる自性清浄心を証するかも知らず、ましてや如何にして仏と成るか、全てを知らない。これを愚痴と無明と申します。

今現在生きている生命体が、この寿命を終える時、次の時空では習気業力に相応した別の道に生まれ変わります。時空と色身が変化することを「異」と称します。衆生が生死を経た後は、身体・時間・身分・場所・生活空間の全てが変化します。餓鬼には餓鬼の空間が、阿修羅には阿修羅の空間が、地獄には地獄の空間が、天人には天人の空間があります。畜生道は人間界と同一空間にありますが、生存環境は依然として異なります。生存環境が変化し、生命形態が転換し、別種の生命体となる。これを異生と申します。