我執と法執はどのように生じ、滅するのか

無始劫の昔、末那識と如来蔵のみが存在し、六識や五蘊身、世界は存在しませんでした。当時より末那識には無明が具わっておりましたが、この無明には業種がありません。六識が末那識に代わって業を造作する機能がなかったためです。よって末那識を無記と称するのであり、単独では業を造作できず、必ず造業の工具を必要とします。末那識は後方に控えて政務を見守り、指揮棒を執って指示を出す役目を担い、前線の戦闘行為は六識に委ねられます。表向きは六識が業を造作しているように見えますが、実態は全て末那識が采配を振るっております。真相を知らぬ者は功過を六識の所業と見做すのです。

我執と法執もまた無明に属し、業種を有さず、無始劫以前より存在しており、業の造作によって生じたものではありません。ただし意識が後天的に環境に染まることにより、末那識の我執と法執を増長させ、自我への執着を強化します。これらの無明は修道によってのみ漸次滅却できるのです。無始劫以前より無明が存在したが故に、無明によって因果なく業行が造作され、無明がなければ業行を造作しようとは致しません。ただし仏菩薩の清浄なる大願はこの限りにあらず。

無明によって造作された業種を無明業と称し、この無明業はさらに転じて末那識の無明を強化します。これらの無明業行は報いを受けることで滅却可能ですが、無明そのものは証道によってのみ消除できます。いかなる程度の道を証得するかによって、それ相応の無明が消除されるのです。