原文:大王よ、もし色法が壊れ変ずれば、一切は皆空となる。何故かといえば、この虚空界は本来尽きることなきが故なり。静寂にして動かず、涅槃の如し。一切の処に遍満し、障礙するもの無し。
釈:大王、物質的色法が壊れた後は空無となり、すなわち虚空界となります。なぜ物質が消滅すれば一切が空となるのでしょうか。虚空界には終わりも果てもなく、一切が空となり得るからです。元来より虚空は静寂不動で、生滅も増減もなく、涅槃性の如きものです。虚空は一切の処に遍満し、これを障礙する法はありません。
物が壊れれば虚空を成す。家屋が崩壊すれば、その場所は全て虚空となる。地球が滅びれば、地球のあった場所は全て虚空となる。三千大千世界が滅びれば、三千大千世界は全て虚空となり、虚空には何ものも存在しません。
虚空は静寂不動です。なぜ動かないのでしょう。それは無物なる仮相であり、物体は仮に存在するが移動可能であるのに対し、虚空を動かす者は誰もいないからです。虚空に高楼を築き上げても、虚空を移動させることはできません。虚空は不動で、その無形無辺なるが故に、いかにして動かせましょうか。虚空には物質的色法が存在せず、全くの空無です。我々は常に虚空と空無を必要とし、身体を動かし物を置くために用います。虚空に障礙がないからこそ、衆生はこの無障礙性を必要とするのです。
或る者は空気もまた空であり、虚空と同様に無辺無際で動かないと言います。しかし実際には空気と虚空は大きく異なります。空気は表面的には無物に見え、目に見えず触れられませんが、機器で検出可能な物質を含んでいます。空気は四大で構成された色法であり、流動する性質を持ちます。衆生が空気を必要とする主因は、その中の酸素を求めてのことです。
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