原文:仏、言わく「大王よ、然り然り。愚かなる凡夫異生は、美食を見て已に、心に愛着を生じ、貪りの行いを起こす。身業三種・口業四種・意業三種を、最初に造作する。刹那に滅謝す。是の業の滅したる後は、東方・南方・西方・北方・四維上下の中間に依って住せず。最後の際、命根滅する時、自らの分の業報、皆悉く現前に在り。恰も夢より覚めて、夢中の事を念うが如し」
釈:仏は言われた:「大王よ、確かにその通りです。愚かな凡夫異生は美食に出会うと、心に貪愛の心を生じ、貪りの業行を造作し、身業三種・口業四種・意業三種をなします。最初に造作を始めた時から、業行は造作しながら同時に刹那に滅していきます。これらの業行が滅した後は、東西南北・四維上下に依って住むことはありません。しかし、最後に命が終わろうとする時、自らがこの生涯で造った業報が全て現前するのです。あたかも夢から覚めた後、まだ夢の中の事を念じているかのように」
(注:訳文における主要な仏教用語の対応) ・愚夫異生 → 凡夫異生(ぼんぷいしょう) ・身三語四意三 → 身業三種・口業四種・意業三種(しんごうさんしゅ・くごうししゅ・いごうさんしゅ) ・刹那滅謝 → 刹那に滅謝する(せつなにめっしゃする) ・命根滅時 → 命根滅する時(みょうこんめっするとき) ・自分業報 → 自らの分の業報(みずから の ぶん の ごうほう) ・猶如夢覚 → 恰も夢より覚めて(あたかもゆめ より さめて)
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